ソムリエとして深くワインを知れば知るほど、
自分たちでつくり提供したくなった
代表である成澤篤人がNAGANO WINEのおいしさに目覚めたのは、ソムリエの資格取得と前後して、勉強のために県内のワイナリーに足繁く通ったときでした。造り手の顔がわかる長野県のワイナリーのことをもっと伝えたい、そう思うようになり、経営するイタリア料理店でも、取り扱う銘柄は増えていきました。
当時は、個人の方が次々とワイナリーを開業していった頃。個人ができる事業とは思っていなかったので、その様子を目の当たりにして、顔のわかるワイナリーを伝えることに意義を見出す一方、自分でつくり提供することこそが、深くワインを知るうえでの最終的な到達点なのではと思うようになっていきました。
生まれ育った場所、長野県坂城町でワイナリーを開設
義弟の小出克典とともにイタリア料理店「オステリア・ガット」をはじめた当初は、じっくりとお客様に愛される店にという想いのみで、お店を広げるつもりも、 ましてやワイナリーを立ち上げるつもりもありませんでした。それを変えたのが“出会い”です。ガットの厨房に小林弘幸が訪れるようになり、それならと2店舗目となる「ラ・ ガッタ」を立ち上げました。ひとつの物件との出会いは、小林千鶴が自家製天然酵母でパンを焼く「粉門屋仔猫」 につながりました。「Vino della Gatta SAKAKI」 そして、想いに共感し栽培と醸造を引き受けてくれる北村智洋や、アメリカで12年ワイン造りに取り組んできたハワードかおりら、たくさんの人に恵まれ、生まれ故郷の坂城町に新たなワイナリーを開設するに至りました。
造りたいワインは果汁をいじらないワイン
適地に適品種を植えてしっかりと畑を管理し、いいぶどうをつくることを目標に、水はけの良い砂利質の土壌を生かし、黒ぶどうはカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを主軸に栽培しています。一方、白ぶどうは、早摘みできて病気のリスクを回避できる品種を定植しています。
高地に比べて酸は少なくとも厚みのあるテロワールを生かし、ぶどうの果汁をいじることなく、坂城町ならではの個性豊かなワイン造りを目指しています。
歩いて訪れることができるワイナリー
ワイナリーで料理とワインを存分に味わっていただきたいという想いから、駅から歩いて訪れることができる場所にワイナリーとレストランを建てました。この好立地を生かし、収穫祭やワインツーリズムを企画するほか、町の名産のバラの季節に合わせた催しも開いていきたいと思っています。
多くの人から協力をもらったワイナリー
長野県でのワイナリー開設の先駆者玉村豊男さんが主宰する日本ワイン農業研究所「アルカンヴィーニュ」でワイン造りやワイナリーの運営について学びました。またワイナリーの設計は熊原信二さん、建築家の宮坂信之さんが、ワインのトップキュベのラベルには現代アーティストの小松美羽さん、セカンドキュベは画家で絵師のOZ-尾頭-山口佳祐さんに携わっていただきました。さらに、開業にあたってはクラウドファンディングなどで、多くの皆様からのご支援を賜りました。多くの人からの協力があってVino della Gatta SAKAKIの魅力が形作られています。
つながりを育てる場所へ
坂城町は観光資源が多くはありません。そういう意味で人が外から来てくれるような場所になってほしいと思っていますが、同時に仲間や、町の人、近所の人、農家の人たちなど、身近な人が何とはなくここに集まって話しているような場所にもなるといいと思っています。ここにきたら坂城町を感じられるような場所。人がいて、ものがあって、つながりを育てる場所。そんな場所にしていきます。
ワインは、産地、品種などをきっかけに多くの人とコミュニケーションをとることができる飲み物です。この地で収穫されたぶどうを使ったワインが、坂城の大地そのものを表現し、人の輪のなかに自分たちのワインがあったらこんなにうれしいことはありません。
土壌
長野県内のワイン用ぶどうの産地の多くは、火山灰に由来する粘土質の黒ボク土ですが、坂城町の農地の大半は砂質・礫質の土壌です。
鍬をおろせば小石が出てくるほどの土は非常に水はけが良く、ワイン用ぶどうの栽培に適しています。坂城町の特産である信州の伝統野菜「ねずみ大根」や、町の花である「バラ」も、この土壌だからこその産品です。こうした土壌や気候はフランス・ボルドーに類似しているといわれています。
気候
年間通じて降水量が少なく、全国でも有数の晴天率を誇る、中央高原型内陸盆地性気候です。昼夜の気温差が月平均10℃を超えることも大きな特徴。その気温差は農産物の糖度・酸度を高めます。こうした気候を生かし、りんごや巨峰などの果樹栽培が盛んです。
近年ではワイン用ぶどうも増えつつあり、町も「さかきワイナリー形成事業」を推進しています。成育期の少雨がワイン用ぶどうの病気被害を軽減し、晴天と気温差が良質な果実を育成します。
立地
長野盆地と上田盆地の間に位置する坂城町。東西に1000m級の山々がそびえ、町の中央最下部を流れる千曲川の両岸には扇状地が広がります。千曲川に平行して走るのは、国道18号線、しなの鉄道、北陸新幹線、そして上信越自動車道。Vino della Gattaは、しなの鉄道「坂城駅」の南東、徒歩10分ほどの住宅地に建っています。
信州ワインバレーのなかでも、千曲川流域に広がる千曲川ワインバレーに位置しています。
メッセージ
ワインを通じて幸せの連鎖が続くことを願って
スタッフと「ワインや料理をつくって提供するだけではなく、ワイン文化を創っていく会社にしていきたい。」とよく話しています。ワイン造りを通して、コミュニケーションの輪が広がり、自分の隣りにいる人のもうひとり先の人まで幸せにできたら本望です。そうしてその先の人が、また隣の人を幸せにする。ワイナリーやお店を訪れてくださった人、ワインを飲んでくださった皆様を通じて幸せの連鎖が続くことを願いながら、これからもワイン造りを行って参ります。
【 坂城葡萄酒醸造 CEO 】
成澤篤人
1976年坂城町生まれ。シニアソムリエ。都内でバーテンダーとして勤務後、帰郷。ワインインポーター、ダイニングレストランを経て、2009年に義弟の小出克典とともにイタリア料理店「オステリア・ガット」を開店。2013年「ラ・ガッタ」、「粉門屋仔猫」を開店。千曲川ワインアカデミー1期生。NAGANO WINE応援団運営委員会を設立。共著に『本当に旨い長野ワイン100』(イカロス出版)。